電車は混み合っている。
その中で汗だくになって苦痛に耐える僕がいた。
「お・・・おい、なにやってるんだ・・・。」
フトモモの間に手が差し込まれたかと思うと、スルスルと股間に向かって上昇してくる。
「はぁう・・・」
パンティのクロッチ部分を揉みしだくように、淫らに動きはじめる。
そして誘われるように僕に向かってサラリーマン達の手がわらわらと伸びてくる。
「やめろ・・僕は男だぞ。男なんだ・・」
そのつぶやきが周囲に通じるわけもなく欲望の餌食になっていく・・・
トンネルに入り窓に車内の様子が写り込む。
そこには辱めを受けている自分がいた・・・
20代前半、スラリと背が高く、それでいて男を狂わすように薄手のセーターに豊かな胸が膨らみを作っている。
パンティをかろうじて隠しているミニスカートからは悩ましい脚が伸びていた。
そしてショート丈のコートとバックを抱えている。
そう、今の僕はどう見ても女の子だった・・・
嘘だ。こんなの・・嘘だ・・・
「はぁん・・」
揉みしだかれる胸や股間。
そこから味わったことのない感覚が強制的に送り込まれてくる。
窓にはフェロモン満載の女の子と股間を膨らませたサラリーマン達が冷たく写っていた。
トンネルを出た。
しかし次の駅はまだ先だ・・・・。
僕の股間からは、クチュクチュと音がし始めている・・「あぁ・・嫌だ・・・やめて・・・やめてくれ・・・」
「はぁはぁ・・・走りづらい・」
真冬の街をショートコートにミニスカに生足の女の子が走る。
その美貌もあって周囲の男たちの僕を追うような激しい視線・・・・
なにより慣れないヒールに手こずっていた。
「女って、なんだってこんなめんどくさいモノ履いてるんだ。」
しかし今はそんなこと気にしていられない、一刻でも早く・・・
「あぁっ!?」まずい! こ、転ぶ!!
しかし正面にいた男に支えられ、転倒は免れる。
「ハハハ、大丈夫かい?」
「・・・」
「ヒールでそんなに走っちゃ危ないよ。何をそんなに急いでいるの?」
男の視線は少しめくれたミニスカから覗いたパンティを凝視していた。
「うるさい、離せ!」
男を振りほどき再び走り始める。
「き、君!!」
コツコツと激しい音は耳障りで僕をさらに不快にしていた。
エレベーターを降り、開放廊下を走り抜ける。
そして見慣れた505号室のドアノブを乱暴にガチャガチャと回した。
「開けて!開けて!!」
叩いたドアから見慣れた・・・あまりにも見慣れた男が現れる。
「・・あら、あなたなの?」
「お前・・・・元に戻せ!元に!」
長身の大学生・・・僕だ。
数時間前まで間違いなく僕だったんだ。
「おい・・・どういうことだよ!!」
「フフフ、すっかり私になってる。賢一クンから見ると私ってこんなに小さかったんだ。可愛いわ茜ちゃん・・・・。」
「・・・。」
僕は憤りと屈辱的な気分で元の自分を見上げていた。
つづく・・・
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