「ま・・まりんちゃん・・・ひざ大丈夫??それにさっきからどうしたの??」
一人の女の子が心配して姿見前の俺に近づいてくる。
「い、いや!そっその・・・ハッ!」彼女の顔を見て俺は息をのんだ・・・・
世里香だ・・・佐伯世里香だ。
俺を研究室に誘い込み、実験台にした娘だ!!
「おっお前!?・・・」
「まりんちゃん、どうしたの?ホントに大丈夫?」
世里香に続いて他の女子も俺を心配して集まってくる。
いったいどうなってるんだ?? 世里香は、なにごともなかったように俺に接してくる・・・
他の娘たちも真剣に俺を心配してくれているようだ。
俺は呆然として、ホームにかろうじて立っている状態だった。
「学校行けそう??」
「・・・学校?」
ここは俺の学校近くの駅だった・・・あまりの状況のため全く気付かなかった。
「もし大丈夫だったら急ごう。今日の単位、落とすわけにはいかないよ。」
「・・・・。」
混乱の中、俺は世里香たちに手を引かれフラフラと学校前の坂を登らされていた。
俺の学校だ・・・
昨日まで男として、黒瀬達也として通学していた学校だ。
今日は女の子として校門をくぐる・・・・。
世里香をはじめ、俺の周りの女の子たちはかなりの美女ぞろいだ・・・男たちの視線も自然と集まってくる。
その中でもひときわ自分への視線が強い・・痛いほどだ・・・。
無理もない。
豊かに膨らんだバスト、ミニスカから伸びた脚は男であればムシャブリつきたくなるだろう。
・・・・俺が昨日まで女の子に対して、投げかけていた視線もこんなのだったんだ。
男は何気ない視線のつもりかもしれない。
でも違うのだ・・・女の子の立場になると。
性欲に満ちた視線、襲う側と襲われる側の大きな違い。
いきなり訳が分からない状況の中、俺はまりんとして呆然としていた。
「あの・・・世里香。」
授業が一区切りしてすぐに佐伯世里香を捕まえる。
一刻も早く、なぜこういうことになったのか調べなくてはならない!
「あ・・あの・・俺のこと分かる??」
「えっ??」
沈黙が流れる・・・何か知っているはずだ。
「分かるってまりんでしょ??それに俺って・・変な言い方してどうしたの??」
俺のおでこに手を当てながら心配そうにしている。
何も知らないのか??
でも手掛かりは世里香しかない・・・。
「いったいどうしたの?変なまりんちゃん。」
「俺だよ!!黒瀬達也!俺なんだよ!!君の研究室で実験台になって・・・ねぇ、なんか知ってるんだろ??」
「・・・・ま・・まりんちゃん、変だよホントに!! 」
「も、戻してくれ・・・お願いだ。たのむ!!」すがるように頭を下げる。
それでも、いきなり女の子にされた極限状況に屈辱感すら感じない・・・・
ただ事情を知りたい、状況を把握したい・・・そしてなにより元に戻りたかった。
俺は頭を下げながら世里香の言葉を待った。
しかし、彼女はいきなり抱き着いてきたのだ。
「まりんちゃん、いったいどうしちゃったの??こんなに混乱して!!」
背中に手を回し、俺を気遣うようにやさしく抱き寄せる・・・
「なにか悩みがあるんなら話して・・・私、力になるから・・・。」
俺を見つめる世里香の瞳には涙が溢れていた・・・・この娘は何も知らないんだ。
うな垂れた俺の視界には、豊かに膨らんだ胸があった。
ため息を付くとそれに連動して豊かな胸が揺れた・・・。
あの後、世里香は錯乱している俺の話を親身になって聞いてくれた。
しかし何も知らない彼女に、この状態をちゃんと理解してと言っても無理だろう・・・。
すこし落ち着いたが取り付く島もない状態だ。
「・・・・あ、あの・・・黒瀬達也君は知ってる??」
「黒瀬達也君?えぇ、もちろん知ってるわよ。割と有名だから、あの人。」
それだけ・・・なのか?
「うん、知ってはいるけどね・・・・まりんちゃん、その話止めようよ。」
「な、なんでだよ?!」思わず男言葉が出てくる。
「まりんちゃん、急にどうしたの??」
「ごめん・・・なんで達也の話が出来ないの?」
「・・・・黒瀬達也君って大学、辞めたらしいわよ。」
えっ・・・・・・・。
「あの・・・ちょっと聞いていいかな?」
「えっ、高城まりんさん?どうしたの??」
一瞬驚いた後、ひそかにいやらしい笑いを浮かべる忠。
神田忠、俺の悪友だ・・・。
こいつと一緒に合コンで女の子をだまし、破廉恥な行為を何度したことか・・・。
俺が達也だとは知らず、まるで品定めするかのように俺の身体をスキャンしている。
半ば発情したオスのようで不愉快極まりない・・・
そして俺の身体も、それに答えるかのように充分に目の保養になっているのだ・・・見事なほど。
こいつに”俺、達也なんだ・・・”なんて言っても理解することはおろかヤルことしか考えないだろうな。
俺と同じだ。
頭の中は女子とヤルことしか考えてないのに、表面上はクールで女受けする雰囲気を漂わせている。
俺は大学を辞めた覚えはない・・・女体化され意識がない間に何かがあったんだ。
それ以外考えられない・・。
少しでもいい・・・なにか手掛かりが欲しい。
こいつなら、なにか知ってるはずだ・・・
「黒瀬君って大学辞めたんだよね・・・理由知ってる??」
「えっ!?なんでそんなこと気になるの??もしかして達也のこと気になるのかい??」
「そ、そういうわけじゃないけど・・・黒瀬君と仲良かったでしょ??何か知ってるかなって・・・。」
「達也のことね~そうだ!ちゃんと話してあげるから駅前のカフェ行こうよ。」
今、そんな気分なわけないだろ!忠のヤツ、相変わらず・・・。
俺はため息を付く・・・仕方ない。
ちょっと困った可愛い女の子モードに、強引にスイッチを切り替える・・・相手は忠、これが効果的だ。
「ごめんね。今から用事があるの。神田君なら頼れるかなって思ったんだけど・・・」
そう言いながら胸の膨らみを強調し、なおかつ谷間を忠から見えるように調節する。
目を伏せ困った可愛い女の子を演じるわけだ・・・。
見られていないことを敏感に察知した忠は、すぐさま俺の胸の膨らみと谷間を見つめ堪能し始める・・・
目をウルウルさせさらに畳みかける。
「ねぇお願い・・・教えてくれない?」ニットノセーターを何気なく下に引っ張っていく・・・・
俺の胸元ではますます谷間があらわになっていく。
忠の鼻息が荒くなっていくのが分かるほどだ。
「わ、分かった・・・。」
俺の胸に反応した忠の股間は明らかにこんもり膨らんでいた・・・。
自己嫌悪・・・そしてえもいわれぬ不思議な感覚・・・なんだろう??
女の子になって初めてその身体を利用した。
俺はおかしな、陶酔したような感覚に包まれていた。
思ったとおりだった・・・やはり合コンの件。
俺は合コンで女の子誘い込み、好き放題にセックスし辱めていた。
目の前の忠達と一緒に。
ただ外部にそれが漏れるなんてナカナカないことだ・・・自分が辱められたことなんて
女性はかなり言いにくいことだし、わざと変態的な行為を強要したりもした。
”達也はそのことへの罪悪感で突然辞めるって言ってきたんだ・・・。”
忠ははっきりとそう言った。
もちろん俺は自ら退学退学手続きをした記憶は無い。
罪悪感で退学するほど律儀でもない、一体どういうことなんだ・・・。
突然女の子になって、突然元の俺が自主退学している・・・
俺は慣れないヒールの付いたブーツで走り出していた!
もう元の自分に会うしかない!!
しかし走り出した俺に、追い打ちをかけるように異性の身体が訴えかけてくる!
「あぁっむ、胸が・・・ゆ、揺れる!?ちゃんとブラしてるのに・・・女の子ってこんなにプルプルするのか・・。」
そして校内を走る俺の胸に、一斉に男子学生たちの視線が集まる。
今俺がマトっているボディは間違いなく巨乳と言っていい・・・俺が幾度となくムシャブリついてきたそれが、
注目を集めている・・・。
「くっ、くそ!!」振り切るように校内を後にする。
しかし、大学最寄りの駅に着くころには走ることはおろか歩くことも困難になっていた。
女の子の身体は揺れる胸以外にも俺の心をかき乱していた。
頬にかかる長い髪、ヒールの高いブーツ。そしてヒラヒラと揺れ、今にもその下のパンティが見えてしまいそうな
ミニスカ・・。
それらを気にしながら走る行為は俺を激しく消耗させていた。
力を振り絞るように駅の階段を上がる。
「はぁはぁ・・・。」一息ついた所でなにげなく振り返って愕然とした。
下から男たちの刺すような視線が集まっている・・・俺のミニスカの中のパンティに向けてだった。
「きゃあっ!?」
思わず上げた女の子の声は、さらに周囲の注目を集めてしまう。
慌ててスカートを押さえながら階段を上がる様子はタダのか弱い女の子だった・・・なんだってこんなことに。
中には明らかに股間を膨らませているヤツもいた・・・・。
俺をマトっている身体は間違いなく女の子・・・本来男であっても、誰もそれを認めてくれないのだ。
慌ててミニスカを押さえる・・・しかし超ミニ丈のスカートは階段の下に向かって残酷に股間をさらし続けていた。
つづく・・・。